バットガールNEWS

亜米利加西海岸華盛頓から、日本に向けて愛とニュースを打つブログ。

「伝説作りのプロポーズ」の仕掛け人が、バットガールNEWSを始めるワケ

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<さて、ニュースを打つにはどのバットがいいでしょう?>

 

f:id:batgirlnews:20130209132123p:plainざっくり打つと

  • ン十年の海外暮らしの後、最近日本のニュース事情を気にするようになった
  • 輸入される世界のニュースが限られていて、間違い・脚色が多かった
  • ニュースにあまりチェックが入らない
  • 本当のニュースに、野暮な脚色はいらない

 

こんにちは、バットガールです。(なぜバットかは別の記事で。)

 

  • 最近日本のニュースを気にするようになったというのは

アメリカ暮らしの方が日本より長くなってしまった筆者ですが、ひょんなことから、今海外でアツいビデオトピックスを訳したり解説しながら日本にお届けする仕事をすることになり、しばらく楽しんでいました。

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昨年「伝プロ」のビデオを見つけた時は胸がはやり、「すぐにでも日本に伝えたい!」と考えました。ラッキーなことにこのビデオはヒットしてYahoo!でも取り上げられ、木村カエラさんもお気に入りだと聞きます。何より、これを見た人達がその後少しでもハッピーな気分になれたのであれば嬉しいです。

 

プロポーズは好きでも中身がオヤジなので、最近まで日本のニュースは日経電子版とかWSJ日本版などで済ませていました。しかし読者様の動向をチェックすべく、日本のソーシャルニュースサイトをいろいろとチェックするようになったのですが...。

 

  • 輸入される世界のニュースが限られていて、間違いも意外に多かった

日本のプロというのは仕事にプライドを持っていて、ニュースなら正確な情報を伝えているのだろうと(かなり勝手に)想像していたのですが、ネットで見るニュースが氾濫し、とにかく目立ってクリックを得ることが重視されているようです。さらに、主流ニュースの参照元はその多くが、似たり寄ったりの【AP 】【ロイター】などのニュースを省略したもの。細かな文化的なこと、主流から外れているニュースはなかなか伝わってきません。伝わるのは個人ブロガーが誤訳した情報だったり。(新情報にとても敏感で感心するブログも勿論ありますが。)

 

大手のニュースでも、誤解を生む翻訳をすることがままあります。例えば少し前に見たのは、某有名ブロガーさんが「ヘンリー王子は人を殺したことをゲームかのように『楽しい』と発言した」と拡散していたニュース。これ、元記事もかなり翻訳がおかしいと言うか、辞書の上でしか英語を知らない人間が不完全にした訳なのです。(わざとか間違いかは不明。)

 

ちなみに題は、ヘンリー王子がアフガン任務終了、「タリバン戦闘員を殺した」でした。...そりゃあアフガンに派遣されたら普通、同胞を守るために誰かを殺すことになってしまうのは免れないでしょうね。そうしなければ自分達が死にますから。(アメリカでは毎日のように兵士の死亡記事があります。)「王子」と「タリバン」、さらに「殺した」と書いて、「これでこの記事のヒットは確実だ...」と喜んだ人がどこかにいたことは確実です。

 

さらに問題は、インタビューの内容を「楽しいよ。僕はプレイステーション(PlayStation)やXboxで遊ぶのが大好きな人間だから。僕のこの親指がすごく役に立っていると思いたいね」とか、とーーーっても誤解されやすいように訳したことです。(ゲームを悪役っぽくするのも、主流メディアがよく使う手口ですね〜。人を乗せやすい扇動手段です。)

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【↑ゲーム=悪という図式はありがちな扇動ですが、研究ではゲームで長期的に暴力性が増すことは証明されていません。(プレー後の短時間の興奮などが挙げられますが、スポーツをした後なども同様の効果があります。)子供の問題解決能力が増すという研究結果はあります。】

 

BBCニュースの記事と実際のビデオで王子のインタビューを見ましたが、彼は戦争が楽しいとは言っていませんでした。あまり楽しそうでもありませんでした。(筆者は別に王子ファンではありません。)

 

本当に必要な時... 仲間が撃たれている時、撃ち返す必要がある場合のみ撃つが、それでも撃つことが全てではない、地上の同胞を守ることが第一の任務なので、と話していました。 

 

それではゲーム、鍛えた親指云々の発言はどこから?彼が操縦するアパッチ攻撃ヘリの内部を記者に見せて説明している際に、ものすごく沢山のボタンがあるので、(人の命に関わるため)間違ったボタンを押さないようにするのが非常に大切、という話をしていて、それに長年鍛えたゲームの腕が役立ったかも、と言ったのです。人を殺すのに親指が役立ったというのではなく、むしろその逆、守るために正確な操作ができて良かった、という内容でした。

 

「楽しいよ」と言った、という部分はどうでしょうか。インタビューの全く別の部分で彼は、「I enjoy my duties」(職務には合っていると思う)と発言しました。英語圏に住んだことがある方はお分かりかと思いますが、「enjoy」は英和辞書で引くとたいてい「楽しむ」と出てくるものの、仕事に関した話をする場合や言い方によっては、その限りではありません。「I enjoy my job」などと言う時は、「合っていると思う」「満足している」(=「不満は言えない」)みたいな感じの時も多いのです。インタビューを見る限り、意味は後者でした。

 

ですから、まともな英語メディアはこのインタビューで騒ぎ立てることはありませんでしたが、インタビューの中では離れていたパーツを繋げて、戦争を楽しんでいるかのように書いた記事・そしてその伝言ゲームは日本でかなり見られました。これでヘンリー王子の印象が悪くなった人も多かったのでは?

 

  • ニュースにピノキオチェックが入らない日本(公式には)

アメリカではFact Checkと言って、何か目立つニュースがある度に、それを専門にしている人達が事実かどうかチェックします。例えばワシントンポスト紙にも「ピノキオ度チェック」をするThe Fact Checkerジャーナリスト、グレン・ケスラー氏のブログがありますが、先日クリントン元大統領が銃器規制法案についてスピーチをした時もチェックが入りました

 

その時はクリントン氏がアメリカで今まで起こってきた銃乱射事件について統計結果を述べ、それが少し大げさだったという話でしたが、今日はその反対側、「全米ライフル協会(NRA)が公表している会員数、450万人というのは本当か?」というチェックでした。こうしたFact Checkerがあちこちにいるので、ニュースのヘッドラインの真偽も少しググればすぐわかります。財団法人がスポンサーしているNPOFact Checkサイトもあり、オバマ大統領が述べる言葉も随時チェックされます。

 

日本ではソーシャルニュースが流行っていることで、ツイッターやまとめニュースサイトでさまざまな声が聞けますが、「こっちではこう出てたけど」「でもこうらしいよ」というバラバラの「〜らしい」が殆どで、理路整然としたチェックが公の場で入っていないように思えます。

 

  • 本当のニュースに、野暮な脚色はいらない

いいお酒はストレートで飲むのが美味しいのと一緒で、「News worthy」、ニュースになる価値がある出来事であれば、下手な細工はいらない筈です。ニュース報道が本当の「中立」を保てるものなのかは意見が分かれるところですが、間違った情報を意図的に流しているケースを見ると、「これでみんなまたネガな反応エネルギーを無駄に使うのか... 」と悲しくなります。

 

1回しかない人生、偽ニュースや嫌悪感・ステレオタイプを助長して煽るニュースにエネルギーを費やすのは勿体ないと思うのです。

 

バットガールが1人でそれを正せるわけはないですし、少しでもと思うのもおこがましいのですが、他にお仕事をしながらも、気になったいいニュースをお届けしていこうと思います。(趣味として。)Fact Check(バットチェック!)も少しずつしていく予定ですので、もし「これホント?」と気になるニュースがありましたらお知らせ下さい。

 

それではまた、次回まで... 。Hasta la vista baby!